【中小企業の商社との付合い方】
12月9日(金)大井町の「品川区立中小企業センターで開催されたメンター/メンティ交流会での講演【中小企業の商社との付き合い方】の内容の骨子を下記に纏めます。ます最初に私の履歴を簡単に説明させて頂いてから、「商社機能」、「中小企業の商社への関心事」、「商社の本音」、そして最後に「商社との付き合い方」という順でお話しました。 |
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<メンター会議の姿: メンティとの「交流会」の準備をしている> |
1.はじめに メンタークラブに興味をもって訪れる方々は中小企業やベンチャー企業が殆どで、大企業が相談に来ることはまずないでしょう。そしてメンティが相談したいという事柄のトップ3は @融資 (必要資金の調達)A販路拡大 B海外市場開拓なのです。@の例は、「開発案件を抱えているが、その開発に投資をしてくれる先が欲しい」という要望、そしてメンティが「ベンチャー企業」の場合は殆どがこの要求なのです。そしてAの例としては、「商売は順調に伸びて来ているが、この先今一歩商量拡大を図りたいがどうしたらいいか」という相談、そしてBの例として最近特に多いのが、お隣の「中国」に進出したいがどうしたらいいかの相談なのです。 このような要望を満たしてくれるのは「商社」ではないかとメンティの方々はお考えのようなので、私の経験から「商社との付き合い方」に関して私の考えをお話したいと思います。
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2.商社機能 その前に「商社機能」とは、つまり商社とはどんな仕事をしているのか、に就いて整理してみます。 ●「商取引機能」=物を 売った、買った の機能で最もコアな売買取引機能。 ●「情報・調査機能」=広範囲にわたり情報を収集、その結果を分析し商売に生かす。 *昭和30年頃は世界の隅々まで出店を設置しテレックス・ネットワークを張り 巡らしておりどこの新聞社よりも早く現地の出来事を掴んでいたと言われている。 ●「市場開拓機能」=需給動向を分析し、グローバル(世界的規模)な市場を開拓。 *ビスケットからロケットまで。 ●「事業開発・経営機能」=さまざまな機能を駆使して、事業の開発・育成に努める。 *「川下」から「川上」まで。 ●「金融機能」=商社独自の金融機能を提供する。 *例えば「セメント」などの材料のメーカーへの支払を代行してやり工事業者には支払いに猶予を与えてやることで、薄口銭でも商社が介入する商売ー→この形態は商社間での「売上高競争」の盛んな時代によく行われていた。 ●「リスクマネジメント機能」=蓄積したノウハウを活用し、ビジネス上のリスクを最小限に収める機能。 ●「ロジステックス機能」=物流事業に参入し、事業の全体最適の物流を目指す。 ●「オーガナイザー機能」=各種機能を有機的に組み合わせて大型プロジェクトを推進。 |
<メンター・メンティ交流会の姿> |
3.中小企業の商社への関心 以上のような種々商社機能の中で、今日は皆さんが一番興味のある「市場開拓機能」に就いてお話しをしてみたいと思います。市場開拓と言ってもその立ち位置によりいろいろな形態が考えられます。どんなケースが多いか以下に例をあげてみましょう。 ■国内で今の販路をもっと広げたい これまで商売をやってきたが、今のままでは更なる販路が広がらない。また広げる為に営業マンを増やす余裕もない。こんな場合には「商社」にお願い出来るのだろうか? ■海外に進出したい すでに国内では競合他社とで市場は満杯となったので、いち早く隣の中国に進出したいが、その場合はどのように「商社」にコンタクトしたらいいのか? ■自分のブランドで売りたい これまではOEM専門でやってきたが、OEM先から突然注文が途絶えたらどうしたらよいかと絶えず不安が伴う。そこで自分のブランド製品を扱えば安定した生産計画が組めると思うのだが、そんな場合に自社ブランド製品の販売を商社にお願いしたいがどうアプローチすればよいか? 以上のような要望が多いのですが、商社活用法はなかなか難しいのです。そこでまずは『商社の本音』についてお話ししましょう。
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4.商社の本音 商社は世界中を股にかけ連戦練磨で商売を作って来ただけに、商売のプロと言えましょう。つまり「儲からなければやりません」 また商社の営業に携わっている人間は普段忙しく動き回っており、新しい話(引合)に対して直感的に +「売れそうか?」 +「市場は大きいか?」 +「リーズナブルな利幅がとれそうか?」 を判断して(これを『商社本音の3要素』としましょう)、取捨選択をしています。また一般に商社は「特長(セールスポイント)が分かりにくい商品」、「技術的に複雑な商品」などは苦手とします。
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5.商社との付き合い方 上述の「商社の本音」の3要素にすべて「Yes」ならば、高い確率で商社が取り上げてくれるでしょう。つまり「大いに売れている商品で、市場は大きく、マージンも十分に取れる」といった商品(開発品)なら取扱いOKとなるのでしょうが、しかしなかなかそのような優等生な商品/製品が簡単に有る訳ではありません。 それでは、どのようにアップローチをしたら良いのか、その手順に就いて私の考えを述べてみます。 ○対象となる商品(製品)の立ち位置を十分に分析しておく。 つまり上述の「商社の本音」の3要素の内、少なくとも2つを満足しているか? その判断の為には、市場分析、競合他社との力関係、海外市場の場合はなぜその市場を狙うかの明確なる理由を準備しておく必要が有るでしょう。 もし上述の「商社の本音」の3要素の内、満足できるのが1つ位だとすると、商社はまず興味を抱かないでしょう。従い「商社」へのアプローチは時間の無駄と言う事になります。 このケースの場合には、むしろインターネットの時代ですから、自前で『ネット販売』の道を探るのが現実的と思われます。 ○商量増に対する施策 これが最も大事なことですが、商社扱いにより生産量(販売量)が増大した場合には生産はどうするのか? 工場のラインの増設か? 外注に出すのか?品質の維持は大丈夫か?などの検討を余りせずして、ひたすら商量の増を望むケースが多いのですが、これはすぐに商社には見透かされてしまいますので、必ず事前にこの点に関してもしかりした対応策が必要となります。 ○商社マンに「魅力的」と思わせるセールスポイントをしっかり纏めておく。 ○人脈、コネの活用 次の段階が具体的に商社へのアプローチとなりますが、その際に商品の特長から、どこの商社がその業界に強いかを調査し、「総合商社」を選ぶか、「専門商社」にするか、をまず絞り込むことが必要でしょう。 特に海外市場を考えている場合には、商社にコンタクト前に、自前でその市場を調査目的で海外出張をする事をお勧めしたい。この出張によりその市場の実態を知ると同時にその商品市場分野で活躍している日本の商社を知ることも出来よう。 さて、商社にアプローチを掛ける際には、友人知人を介して、その商品および市場に最適な人に辿りつけるかが重要になって来ます。この面でも「メンター/メンティ交流会」も一つのよい機会と言えましょう。 例えば、エレクトロニクス関係、コンピュータ・ネット関係、機械関係(自動車、建設機械、農業機械、など)、農産物関係、エネルギー関係、などなどその商品の市場に携わっている人物に辿りつけることが重要でしょう。 そして市場とは、例えば中国市場なら中国に駐在している人物に辿りつける事が近道なのです。例えば東京本社の人物から海外駐在員に市場開拓の依頼を出してもらう方法は私の体験からして、ビジネスの実現がなかなか難しいように思うのです。 以上はなはだ取り留めのないお話しとなりましたが、商社との取組は中小企業やベンチャー企業にとって簡単ではないようです。今日のお話しが今後の皆様の商売拡大の一助となれば幸いです。ご清聴ありがとうございました。 <完> |